2005年に
Steven Spielbergが監督、
Tom Cruiseの主演で同名の映画がリメイクされていますが、今回私が観たのは1953年に公開されたByron Haskin監督作品のほうです。
2005年版は
Steven Spielbergが語っているように、9.11テロを意識させる要素があえて挿入されているのですが、1953年版は無論9.11テロの起きるはるか前で、当然テロの影響はありませんでした。ただ、この作品が9.11テロのあとアメリカ人の脳裏に呼び起こされ、2005年に
Steven Spielbergをはじめ3人の監督によって映画化されたというのは、単なる偶然ではないでしょう。
ストーリー自体はひと言でいえば「荒唐無稽」。おそらく
Steven Spielbergの2005年版のほうがずっと見応えはありそうです。特撮技術が稚拙だった当時では仕方のないことですが、火星人や彼らの乗ってきた宇宙船はウルトラマンに出てくる怪獣や戦闘機と変わりません。だからホラーやスプラッターの苦手な私も余裕で楽しめました(笑)
ストーリーや特撮技術は稚拙ですが、作品に込められたメッセージはアメリカを知る上でとても参考になると思います。
ある日火星人が地球に襲来し、彼らが攻撃を始めたとき、ヒロインの叔父の牧師が、「我われ地球人は彼らに敵対するつもりはない」ということを示すため、聖書を片手に彼らの宇宙船の前に歩いていきます。牧師はそこで、George.W.Bush前大統領も演説で用いた有名な詩篇の一節を唱えながら独りで前進し、宇宙船の攻撃を受けて亡くなってしまいます。
また、世界中で火星人の攻撃が続く中、最後の砦となったアメリカでは、人びとが教会に集まり、救いを求める祈りを捧げていました。彼らにとって、最後の拠りどころは「神」だというわけです。
そして神のご加護のおかげか、どの教会も攻撃を受けずに済んでいたのですが、ついに教会にも攻撃が加えられてしまいます。ところが教会が攻撃を受けたその途端、彼らの宇宙船が突然動かなくなって攻撃が止むんですね。
彼らの攻撃が止んだ原因は、彼らが地球の外気を宇宙船の中に取り入れたことで、空気中の細菌に侵されて火星人たちが死んだからという、本当に荒唐無稽な結末です(笑)
この荒唐無稽な結末は、「創造主」が人類に与え給うた極小の細菌によるものとされ、人類は聖書に書かれた「終末」を乗り越えたのだという、アメリカのJewやChristianたちにはとてもなじみ深いものになっています。
この作品が、9.11テロのあと
Steven Spielbergの手でリメイクされたところに、アメリカの一神教的な選民思想を感じずにはいられません。